片瀬江ノ島駅 IP-Goldチタン屋根

  • ゴールデンND20

  • 耐塩害性
  • 外装
  • チタン
  • マット


Case Study / IP-Gold Titanium

片瀬江ノ島駅 屋根飾り
IP-Gold チタンの採用事例

小田急電鉄様 片瀬江ノ島駅 / 設計:清水建設様
日本製鉄様との共同研究開発・特許取得技術
ものづくり日本大賞 受賞

塩害環境 / 長期耐久性 / 伝統×現代建築 / サステナブル意匠

竜宮城をまとった駅に、黄金の屋根飾りが輝く

神奈川県藤沢市、江の島の玄関口に立つ小田急電鉄様の片瀬江ノ島駅は、竜宮城を模した唯一無二の外観で知られています。朱色と緑が織りなす重厚な意匠の中に、ひときわキラリと輝く黄金色の屋根飾りが視線を引きつける——その輝きを担っているのが、東洋ステンレス研磨工業が日本製鉄様との共同研究開発によって生み出した特殊技術「IP-Gold チタン」です。

この屋根飾りの設計・施工を担ったのは清水建設様。伝統建築の意匠的文法を現代建築に昇華させるというコンセプトのもと、長期耐久性と美しい金色意匠を同時に成立させる素材として、IP-Goldチタンが採用されました。

竜宮城のような夢幻的な外観に、科学と職人技が生み出した現代のチタン技術が宿る——片瀬江ノ島駅は、建築意匠と素材技術の可能性を同時に示す、稀有な建築事例となっています。

IP-Goldチタンとは何か

IP-Gold チタンは、チタン表面に特殊な安定化処理を施すことで、深みのある黄金色の発色と、長期にわたる耐食性・耐色性を両立させた特殊素材です。東洋ステンレス研磨工業と日本製鉄様が共同で研究開発を行い、特許を取得しているこの技術は、「ものづくり日本大賞」を受賞するなど、国内製造業においても高い評価を得ています。

一般的に金色の意匠を実現しようとすると、塗装・メッキ・コーティングといった方法が選ばれます。しかしこれらは、紫外線・海塩・温度変化といった過酷な屋外環境に長期間さらされると、剥離・変色・腐食といった問題が避けられません。特に海岸沿いの建物では、塩害による劣化が深刻な課題として知られています。

IP-Goldチタンは、こうした問題を素材レベルで解決します。チタン自体が持つ卓越した耐食性に加え、表面に形成された特殊な安定化層が腐食・偏食(局部的な腐食)を防ぎます。塗料やコーティング膜に頼らないため、剥離・色褪せという概念そのものが存在しない——これが、IP-Goldチタンの最大の特徴です。

また、屋根飾りの緑色部分は陽極酸化法(アノダイジング)を用いたチタン素材であり、こちらもコーティングに依存しない発色技術です。チタンという単一素材が、表面処理の違いによって金色と緑色の両方を実現している——片瀬江ノ島駅の屋根は、チタンの表現可能性を視覚的に体感できる場所でもあります。

海の真横という過酷な環境——なぜチタンでなければならなかったのか

片瀬江ノ島駅は、その名のとおり江の島へのアクセス拠点であり、相模湾に面した海岸のすぐそばに位置しています。海水の飛沫・塩分を含んだ潮風・高湿度といった、建材にとってきわめて過酷な環境の中に建つ構造物です。

塩害は、金属の腐食を大幅に加速させます。一般的なステンレスや鉄は、適切な表面処理や定期的なメンテナンスなしには、海岸沿いの環境で長期間にわたって美観と機能を維持することができません。塗装仕上げであれば、経年による退色・剥離が避けられず、塗り直し・補修のコストと手間が継続的に発生し続けます。

チタンは、こうした環境においてもっとも高い性能を発揮する金属素材のひとつです。海水に対して絶対的な耐性を持ち、腐食や穴あきが生じることがありません。医療・海洋・航空宇宙などの極限環境で長年にわたって使用実績を持つチタンの耐食性は、科学的に実証された事実です。

海水耐性

海水への絶対的耐性。腐食・穴あき発生なし

0

塗装・コーティング

塗膜に依存しない素材固有の発色と耐久性

100+

想定耐用年数(年)

適切に設計されたチタン屋根材の想定耐用年数

IP-Goldチタンはさらに、特殊な表面安定化処理により、通常のチタンが稀に示す局部腐食(偏食)のリスクをも低減しています。海岸環境という極限の試練の場に、このIP-Goldチタンを選んだことは、素材選定の観点から見ても、もっとも合理的かつ先見性のある判断であったと言えます。

伝統建築の知恵を、現代素材で蘇らせる

片瀬江ノ島駅の屋根意匠は、単なる「金色の装飾」ではありません。日本の伝統建築——神社仏閣・城郭・茶室——において長年育まれてきた、金属を薄く美しく使う意匠技法の現代的な継承です。

日本の伝統建築では、金属はしばしば「象徴」として使われてきました。社寺の相輪・瓦の棟飾り・城郭の鯱(しゃちほこ)——これらは構造上の必然からではなく、その場の格式・祈り・美意識を金属の輝きで表現するために設けられたものです。こうした意匠の思想は、「金属を薄く、目立つ場所に、精緻に用いる」という美学を育んできました。

IP-Goldチタンを用いた片瀬江ノ島駅の屋根飾りは、この思想の現代的な再解釈です。竜宮城というコンセプトのもと、海の玄関口にふさわしい荘厳さと祝祭感を金色の屋根飾りで表現しながら、その素材としてチタンという21世紀の先端素材を採用することで、美しさの永続性を担保しています。

清水建設様が示したこの設計的感性——伝統美と現代素材の融合——は、日本の建築が次の時代に向けて進むべき方向性のひとつを指し示していると感じます。美しさは、長持ちしてこそ意味を持つ。その信念を、この建物は静かに体現しています。

長期耐久性——少子高齢化時代の建築が向き合うべき思想

日本は今、歴史的な転換点にあります。少子高齢化による人口減少、深刻な職人不足、建設資材コストの高騰、そして維持管理を担うマンパワーの縮小——これらは単なる産業上の課題ではなく、日本という社会そのものの持続可能性に関わる問題です。

こうした時代背景の中で、建築の「長期耐久性」は、これまで以上に重要な意味を持つようになっています。数十年ごとに建て替えを繰り返すスクラップ・アンド・ビルドの時代は、すでに終わりを迎えつつあります。代わりに求められるのは、一度建てたものを何世代にもわたって使い続けられる、高い耐久性と柔軟な可変性を持つ建築です。

チタンは、こうした時代の要請に正面から応える素材です。適切に設計されたチタン建材は、メンテナンスフリーに近い状態で100年以上の耐用年数が期待できます。屋根・外壁・内装に使用されたチタン素材が世代を超えて機能し続けることは、その建物を繰り返し使い続けられる環境を整えることにほかなりません。

長期耐久性がもたらす社会的価値

補修・塗り替えコストの削減

塗装・コーティング依存の仕上げ材は、数年〜十数年ごとの補修コストが継続的に発生します。チタンはこの「維持費の連鎖」を断ち切ります。

職人・施工マンパワーの温存

補修工事が不要になることで、希少な職人の技術・時間・体力を、より本質的な新築・創造の仕事に振り向けることができます。

建物の世代間継承

長持ちする建物は、世代を超えた資産となります。次の世代が同じ建物を使い続けることで、土地・素材・技術の循環が生まれます。

サステナビリティへの貢献

チタンは100%リサイクル可能な素材です。建物解体時に回収されたチタン材は、ほぼそのままの品質で再利用できます。環境負荷を最小化する循環型建材です。

片瀬江ノ島駅の屋根飾りは、こうした思想を建築として可視化した事例です。美しい黄金色の意匠が何十年後も変わらず輝き続けることは、単なる美観の問題ではなく、建物を維持管理する人々の労力を省き、素材資源を大切に使い続けるという、持続可能な社会への具体的な貢献です。

「高価な素材」チタンを、賢く・美しく使う

チタンが高価な素材であることは、事実です。鉄・ステンレスはもちろん、銅・アルミニウムと比較しても、チタンの素材コストは高くなります。この点から「チタンは特殊な建物にしか使えない素材だ」と捉えられることが多いのは事実です。

しかし、コストの考え方を変えるとどうでしょうか。

建材のコストは「初期購入費用」だけで評価するべきではありません。建物の生涯を通じた費用——素材費・施工費・維持補修費・解体リサイクル費——を合算したLCC(ライフサイクルコスト)で考えるとき、チタンの評価は大きく変わります。

塗装仕上げの金属建材は、初期費用こそ低く抑えられますが、10年・20年という単位で繰り返す塗り直し・補修・足場架設のコストが積み重なります。特に海岸沿いのような塩害環境では、補修サイクルが短縮され、累積コストはさらに膨らみます。チタンは、こうした「維持費の連鎖」を根本から断ち切ります。

さらに重要なのは「薄く・美しく使う」という設計思想です。チタンは軽量かつ高強度なため、必要な場所に必要な厚さで使うことができます。すべての面をチタンで覆う必要はありません。意匠上の核となる部分——屋根飾り・庇の先端・ファサードの要所——にチタンを配置することで、初期コストを抑えながら、その場所ならではの長期耐久性と美しさを最大限に引き出すことができます。

片瀬江ノ島駅の事例は、まさにこの思想の実践です。建物全体をチタンで包んだのではなく、もっとも目を引き、もっとも過酷な環境にさらされる屋根飾りという「核心部分」にIP-Goldチタンを採用することで、意匠インパクトと耐久性を最小のコストで最大化しています。

プロジェクト概要

プロジェクト名小田急電鉄様 片瀬江ノ島駅 屋根飾り
所在地神奈川県藤沢市片瀬海岸(相模湾沿岸)
設計清水建設様
採用素材IP-Goldチタン(屋根飾り・金色部分)
陽極酸化チタン(緑色部分)
技術開発東洋ステンレス研磨工業株式会社 × 日本製鉄様
共同研究開発・特許取得技術
受賞歴ものづくり日本大賞 受賞
環境特性海岸沿い(塩害環境)/ 高湿度・潮風・海水飛沫への常時曝露
コンセプト伝統建築意匠の現代建築への応用 / 長期耐久性と美の両立

片瀬江ノ島駅が示す、建築の未来像

片瀬江ノ島駅のIP-Goldチタン屋根飾りは、一つの建築事例にとどまらず、これからの日本の建築が向かうべき方向性を提示しています。

少子高齢化・職人不足・資材高騰という三重の圧力に直面する日本の建設産業において、「作っては壊す」から「作り続け、使い続ける」へのパラダイムシフトは、もはや選択肢ではなく必然です。そのパラダイムシフトを建築材料の側から支えるのが、チタンという素材の役割です。

同時に、長期耐久性を追求するだけでは十分ではありません。その建物が次の世代に受け継がれるためには、時代を超えて人々を魅了し続ける美しさが必要です。「美しくなければ、残したいとは思えない」——IP-Goldチタンが発する黄金の輝きは、単なる装飾ではなく、その建物が価値あるものとして次の世代に受け継がれるための「意志」の表現でもあります。

東洋ステンレス研磨工業は、この片瀬江ノ島駅という事例を「未来への示唆」として受け止めています。建築を長く美しく保つための素材技術を追求し、設計者・施工者とともに「世代を超える建築」を実現すること——それが、私たちが研磨技術を磨き続ける理由のひとつです。

今後も、IP-Goldチタンをはじめとするチタン意匠技術を通じて、日本の建築の持続可能な未来に貢献してまいります。

関連する技術・製品ラインアップ

東洋ステンレス研磨工業では、チタンを含む多様な金属の研磨・表面処理技術を持ちます。IP-Goldチタン以外にも、建築・意匠用途の金属素材について幅広くご相談に応じています。

TITANIUM

TranTixxii Design Finish

日本製鉄様のチタンブランド「TranTixxii®」との連携による、建築意匠向けチタン仕上げ。屋根・外壁・内装に対応。

STAINLESS

MAKO® ミステリアスミラー®

ステンレスの鏡面研磨技術による意匠製品ライン。チタンと組み合わせた複合意匠にも対応。

CUSTOM

受託研磨・特注加工

チタン・ステンレス・アルミ・真鍮・銅など多金属の受託研磨。1枚からの特注対応が可能です。

CONSULTING

素材選定・意匠コンサルティング

設計の初期段階から、素材選定・仕上げ仕様・サンプル制作まで一貫してサポートします。

Contact / Sample

IP-Goldチタンのサンプル・ご相談

「海岸沿いの建物に、長持ちする金色の意匠を使いたい」
「チタンで屋根・外壁を計画したいが、コストと仕様の検討から相談したい」
そうしたご要望に、素材・加工・設計のすべての観点からお応えします。

福岡(太宰府)・大阪(淀屋橋)・東京(新橋)の各サンプルステーションで、
実物サンプルをご確認いただけます。まずはお気軽にお問い合わせください。

東洋ステンレス研磨工業株式会社
〒818-0012 福岡県太宰府市 / 大阪(淀屋橋)・東京(新橋) サンプルステーション
ステンレス・チタン・アルミ 研磨加工 / MAKO®TOYO-FMDS / IP-Goldチタン
創業1960年代 / ものづくり日本大賞 受賞 / ウォルト・ディズニー・コンサートホール 採用実績

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